故に世の中おもしろい(宝くじは夢を買うもの)

宝くじは夢を買うもの

 
一獲千金の夢を求めて並ぶ長蛇の列。木枯らしが吹く季節になると、そろそろ年末ジャンボ宝くじだなあと思う。諸説あるが、江戸時代に流行した「富くじ」が宝くじのルーツとされる。

興行主が番号入りの札を発売。別に用意した同じ番号の札を箱に入れ、小さな穴から錐(きり)を入れて突く。それで当たりを決めるという仕組みだ。寺や神社の修復費を賄うためでもあったが、「人心を乱す」として幕府は再三、禁止令を出したそうだ。

東京の下町、江戸川区のJR小岩駅南口には、終戦直後の第1回から宝くじを売っていた名物おばあちゃんがいた。「宝くじは『当たる』と強い信念を込めて売るもの」が口癖。「どうぞ当たりますように」と客に声をかけ、握手を交わした。最後に出勤したのは2009年12月22日。年末ジャンボ宝くじの発売期間の最終日で、夜まで列が途切れなかったという。翌年、90歳で旅立った。

英国の随筆家チャールズ・ラムが賛美していた。「宝くじには、大人の想像力を解放する真に超俗的な力がある」。とはいえ、法外な大金を手にしたために道を踏み外してしまった人もいるだろう。佐藤正午の小説「身の上話」はNHKドラマ「書店員ミチルの身の上話」にもなった。2億円の当たりくじを手にしたことから流転の人生を送る姿をミステリータッチで描いた作品である。

いずれにしても、宝くじは庶民にとって「夢」を買うものなのかもしれない。暗いニュースがあふれている世の中だが、夢は大きく持ちたい。
朝日新聞編集委員 小泉 信一



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