故に世の中おもしろい(サンマ、苦いか)

サンマ、苦いか

 
秋に刀に魚と書いて「秋刀魚」。サンマである。細長い姿がキラリと光る刀のようにも見える。

2018年8月1日付の朝日新聞朝刊に「日本近海を南下する今年のサンマの量は、極端な不漁だった昨年を上回るものの、低調な傾向が続く」とあった。この原稿が読者の皆さんの手元に届くころにはどうなっているか分からないが、値段が高くなっても、日本の秋を代表する食であることには変わりない。七輪で焼くとジューと焦げ、したたる脂。煙がさらに食欲をそそる。

サンマは北太平洋の広い地域に分布し、夏の終わりから日本列島に近づいてくる。北海道の東端、根室通信局(現在は支局)に勤務していた27年前、銀色に輝くサンマの水揚げ風景を取材した。夕刊の締め切り時間ギリギリ。港から戻り、暗室に入って現像したのが懐かしい。苦労して撮影した写真は社会面を飾った。

三陸沖や房総沖を南下するにしたがってサンマの脂は落ちる。紀伊半島沖の熊野灘まで来たころには、ほっそりとした姿になっている。「あはれ 秋風よ 情あらば伝へてよ」と叙情たっぷりにうたったのは和歌山県新宮市出身の詩人、佐藤春夫である(「秋刀魚の歌」)。

私自身、幼いころ苦手だった内臓も大人になって食べられるようになった。小骨まできれいに平らげると、サンマの目が笑っているようにも見える。

歌は続く。「さんま、さんま、さんま苦いか塩つぱいか」人恋しさや世のはかなさが身に染みる秋。今夜はサンマで一杯やろう。

朝日新聞編集委員 小泉 信一



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