なるほどサイエンス(「トリチウム汚染水」という人災)

「トリチウム汚染水」という人災

 
東京電力は6月、福島第二原発(4基)について「廃炉の方向で検討に入りたい」と表明しました。福島県の原発はこれで大事故を起こした東電福島第一原発(6基)とあわせ、すべて廃炉になります。「原子力に依存しない社会づくり」を復興の基本理念に掲げる福島県の人びとは「夢」の実現に一歩近づいたわけです。
 
とはいえ、原発が福島県から姿を消すのは遠い将来です。廃炉作業はそもそも30〜40年がかり。そのうえ第一原発は、いつ廃炉作業に入れるのか、めどさえ立つていません。
 
大きな障壁が放射性物質のトリチウム(三重水素)を含む汚染水問題です。第一原発では毎日、原発の建屋に大量の地下水が流入し、汚染水が増え続けています。
 
政府は汚染水を薄めて海に放出することを検討していますが、世論調査では大半の県民が反対しており、実施は極めて困難です。
 
トリチウムは水素の同位体で、原子核中の陽子は水素と同じ1個。違いは2個の中性子も持つことです。水素、重水素、ヘリウムの原子核とともに、約138億年前の宇宙誕生の直後にできました。
 
ただ、原子核が不安定で、12年ほどで量が半減するため、その後はつくられてはなくなる、自然界では目立たない存在でした。
 
それが20世紀後半、地球上で増え始めます。理由は、核実験。核爆発の過程でトリチウムが生成されるからです。原発が建つと、そこからも放出され始めました。そして、原発事故――。汚染水問題は人類が自然を擾乱じょうらんしてきたひとつの帰結でもあります。

朝日新聞編集委員 上田 俊英



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