故に世の中おもしろい(てげてげの精神と庄助さん)

てげてげの精神と庄助さん

 
九州で取材していたとき、「てげてげ」という言葉を耳にした。諸説あるが、「大概」が変化したという。いい意味での「いい加減さ」なのだろう。南国特有のゆったりとした空気に包まれていると、「てげてげでいいじゃないか」という気持ちになってくるから不思議である。

九州から遠く離れているが、民謡「会津磐梯山ばんだいさん」に登場する小原庄助おはらしょうすけさんを思い出す。朝寝、朝酒、朝湯が大好きで、それで身上をつぶした天下の道楽者。会津の商人説、武士説、塗り師説があり、謎も多いが、マイペースな生き方を貫いた人物だったのだろう。
福島県白河市には、庄助さんが眠っていると伝わる墓がある。笑ってしまうのはその形。酒を入れるとっくりのように見える。戒名は「米汁呑了信士こめじるどんりょうしんじ」(「米汁呑了居士こじ」の説も)。米汁とは酒のこと。「朝によし昼になほよし晩によし、飯前飯後その間もよし」が辞世の句と伝えられている。

しかし、同じ福島県の会津若松市や、千葉県木更津市にも小原庄助さんのものと伝わる墓はある。いや、あれこれ探るのはよそう。どの墓に眠っている人もきっと大酒飲みだったにちがいない。
朝寝、朝酒はおすすめできないが、ときには「てげてげの精神」も大切ではないか。焦らず慌てず。水前寺清子さんのヒット曲「三百六十五歩のマーチ」が脳裏に浮かぶ。1年は365日。3歩進んで2歩下がることで人生にゆとりが生まれることもある。「♪ハアもっともだあ、もっともだあ」。庄助さんの声も聞こえてきそうである。

朝日新聞編集委員 小泉 信一



<< ミョウガとウズラ…
旅のアクセント(… >>
一覧へ

▼おすすめ情報ランダムPICKUP▼

百舌/鎌倉中央
らーめんとカレーの店 蓮/鎌倉中央